2)"話の話 ロシア・アニメーションの巨匠
ノルシュテイン &ヤールフソワ :
Tale of Tales Yury Norshtein & Francheska
A: 展覧会 /Exhibition
展覧会の正確なタイトルは
"話の話 ロシア・アニメーションの巨匠
ノルシュテイン& ヤールフソワ :
Tale of Tales Yury Norshtein & Francheska Yarbusova"
一息で読む事ができないほど長いもの、そして覚えられない……。
内容的には彼の妻であるヤールフソワの原画展がメインの展示でした。
マケットと呼ばれる箱が、私には今回の展示の中で最もおもしろく
感じられました。
展示されているマケットは、ちょっと水槽のようです(写真上)。
中はシャドウボックスのシンプル版のよう、平面の図柄を重ね合わせて奥行きを出しています。
他には、"話の話"で使用されたセッティングのレコードプレイヤーとその上に設置された紙人形などがありました。
午前と午後にアニメーション上映があり、私達は午後の部 :
"アオサギとツル"
"話の話"
"冬の話(発句)"
"外套"(未完)
を観ました。
彼の作品を観るのは初めて!
"話の話" : Tale of Tales Part Ⅰ, : ★ (動画)
なんて繊細な表現なのだろうと思い、その観察力にすごい作家だな〜とも感じました。
けれども"話の話"は私にとって難解でした。
ああだろうか、こうだろうか、あれあれあれ?
と作品を戸惑いながら観ました。
戦争を描き出しているのはストレートなのですが、他の部分との相互関係が自分の中で作れず、物語についてゆけませんでした。
全体としての作品の印象は、シニカルで、暗くて怖い、そして希望や日の明るさが乏しいように思いました。
東ヨーロッパの映画やアニメーションを沢山観て来たわけでもないし、例をあげることもできませんが、印象として私には東ヨーロッパの作品の雰囲気がしました。
このような作品は観た後に幸せな気持ちにはなれないかもしれませんが、何かしら心に残り続けて、それが日々の中でふっと思い出され、立ち止まる機会を与えてくれます。
そして違う方向から物事を見させてくれたり、認識させてくれたりします。
少なくとも私にはそういう働きがあります。
Exhibition
The full title of the exhibition is
"話の話 ロシア・アニメーションの巨匠
ノルシュテイン& ヤールフソワ :
Tale of Tales Yury Norshtein & Francheska Yarbusova"
This is such a long title, so I cannot remember it.
I felt most of the displays were works of his wife, Yarbusova.
For me the most interesting parts of the exhibition were the maquettes.
The maquettes looked a little bit like water tanks (above photograph).
Inside is simple shadow box that has some two-dimensional layers making three-dimensional effects.
One of the other works was paper figures on a record player.
It was used in "Tale of Tales".
They showed two film programs, one in the morning and another in the afternoon.
In the afternoon, we watched :
"The Heron and the Crane",
"Tale of Tales",
"Winter Days" and
"The Overcoat" (not yet complete).
It was the first time I saw his work.
Tale of Tales Part Ⅰ : ★
I was so impressed with the delicate representations, he has sharp powers of observation.
I think he is great, however, it was very difficult to understand "Tale of Tales".
I tried to follow the story, it might be ....., it meant ...., oh dear dear...
I did not make it.
My total impressions of the films is that they are cynical, dark and scary, and also a lack of hope and sunlight.
The films reminded me of other Eastern European animations.
I haven't seen a lot of Eastern European animations and I can not give examples, however, I felt that the atmosphere of his films are Eastern European work.
I think that the works, including his, do not make me happy, although they have been in my inside and sometimes it has come out in daily life.
Then it gives me a chance to stop and consider about things.
After then I can look at things from a different angle or recognize
a new thing.
At least this type of film works for me like this.
B: アニメーション/ Animation
随分前から私は日本のアニメーションを"アニメ"と呼び、ヨーロッパのアニメーションを"アニメーション"と呼んで自分なりに区別してきていました。
本来その理由は国別ではなく、何かしら自分の中にある境界線
によって区別されていたのです。
例えば、日本の昔話をアニメーションにした
"おそばの茎はなぜあかい"
という作品は私にとってアニメーションであり続けています。
(私にファンタジー世界の魅力を植え付け、創作の土台を与えてくれた作品でもあります)
ですが、いつ頃からはわかりませんが境界線を意識しはじめたときから、ヨーロッパの作品の方が私にとって"アニメーション"であることが多く、日本の作品は"アニメ"であることが多かったのです。
私なりに簡単に国別を理由にして呼び方をかえていました。
例えれば、このお料理はイタリアンか日本食かという区別に似ているように自分では思います。
美味しければなんでも良いといえば良いし、区別したい人はすればいいしというようなものでしょうか?
そして、私にとって区別してきたものが
"アニメ"
と
"アニメーション"だったのです。
現在日本では(国際的なことはわかりません)、私がアニメーションと呼び続けてきたものがアートアニメーションと呼ばれていることを
知りました。
"アニメ"という大きな流れで埋まっている日本で、
"アートアニメーション"が台頭してくるのは望ましいです。
選択肢が増えるのは、作り手にとっても受け手にとっても、また映像世界にとっても良いことでしょう。
映像世界全体が発展してゆくことにも繋がると思います。
私にとって新しい言葉、アートアニメーションは、他の人と共有もできます。
"冬の話”(薮医者と芭蕉の話)の上映を観たときに彼は日本の文化に興味があるのだな〜と思いましたが、それ以上に彼と日本の関係はあるのでした。
Animation
I have used "ANIME" for Japanese animation and "ANIMATION" for European animation for a long time by my own distinction, however, originally I did not tell the distinction by countries, I have had my own uses for some words.
For example, a Japanese animation of a Japanese myth :
"Why a stem of Soba (made into a Japanese noodle) is red?"
has been ANIMATION for me.
(This particular animation had a big effect on me, it implanted an attractive fantasy world and gave me a foundation of some creative work.)
However, for me, most European animations have been "ANIMATION" rather than Japanese animations since I recognized my separation of definitions between "ANIMATION" and "ANIME".
After that I called them differently, simply by the country they came from.
I think it is a similar question for a meal which might be called Italian or Japanese.
It does not matter for some people if it is delicious, whether some other people would describe the meal as Italian or Japanese.
Then I guess that I would decide a work is "ANIMATION" or "ANIME", as a meal is Italian or Japanese.
Today, I recognized that my "ANIMATION" is called "art animation" in Japan, although I do not know about the rest of the world.
I am pleased the art animation movement has been growing slightly bigger in Japan, even though "ANIME" is much larger.
The increase in choices is better for creators, viewers and the film world, and so the film world can progress.
And also it is good for me too, because I have got a new word,
"art animation" which I can share with other people.
I was surprised that there is an art animation competition :
Norshtein Award, held once a year in Japan.
[Below : I wrote about Norstein in '2) ラピュタ / Laputa'.
When I watched "Winter Days": a story is about a very popular Japanese poet, Basho and a poor doctor, I thought he is interested in Japan or Japanese culture.
Later I researched about him, and realized he has strong connections with Japan.
C: ノルシュテイン / Norshtein
ノルシュテイン (1941 -) はロシアのユダヤ人のアニメーション作家で現在までに彼の作品は数々の賞を得ています。
話の話と霧の中のはりねずみが最も知られている彼の作品です。
2004年には『ロシアにおける日本文化とアニメーション発展への貢献が認められた』ので旭日賞を授与されています。
彼が審査員の日本のコンクールでは、かなり辛辣な彼の批評があります。
それは参加者に対する誠実で芸術家として正直な態度であると思います。
私は彼の態度やコメント内容から彼の強固な意思と仕事 (アニメーション) に対する熱い思いを感じます。
素敵な人だ!と思いました。
でも私はひ弱なので、彼のコメントをもらったらへなへなに参ってしまうかもしれません……。
彼やアートアニメーションのリサーチをしている中で、私は東京現代美術館で、最近観たフセインチャラヤンのフィルムを思い出しました。
アートアニメーションは現代美術のひとつの表現方法としてもさらにとりいれられてゆくのだと思います。
Norshtein
Yuriy Borisovich Norshteyn (1941 -) is a Russian, Jewish and an animator.
"Tale of Tales" and "Hedgehog in the Fog" are well known works.
He has been working on "The Overcoat" since 1981.
He has got many awards all over the world. He got a Japanese decoration in 2004 recognizing that he has contributed to Japanese culture and animation in Russia.
I think when he was a judge for animation competitions in Japan,
he gave severe criticisms to candidates.
He appeared harsh on them, although I think he was sincere, and artistiscally honest, but in fact he was really kind for them.
I feel his strong spirit and passion for his work by his criticisms and his attitude.
I feel he is a fantastic person, although I could not stand it if he gave me hard criticisms, because I am weak.......
When I researched about him and his work, I remembered animations of Hussein Chalayan in Contemporary Art Tokyo recently.
I think art animation might become more important in contemporary art.
D: 空気感 /Atmosphere
彼が日本文化に興味があることは"冬の話”の作品があることでわかります。
わびさびの文化がその作品に描かれています。
またその作品からは飄々とした空気と詩的な世界が感じられ、
ちょっとしたユーモアも感じました。
観賞後私は現在の”わびさび”はすっかり高額商品になり、その本質とはかけはなれてしまっているように思えました。
”外套”(ゴーリキ作)という作品は緻密な表現と金銭的に恵まれない
世界、そして季節としては冬を描くことは"冬の話”と同じですが、
そこに流れる空気はかなり違うものです。
"冬の話”は詩的に描かれ”外套"はかなり現実的に表現されています。
その作品はまだ終了していませんが、ゴーゴリの原作の結末は悲惨です。
主人公アカーキイ・アカーキエウィッチは幽霊になり裕福な人の外套を奪うのです。
私にとってはいい気持ちになれない結末です。
作品ができあがり上映された後も、そこには人生の無常さが残るだけでしょう。
その空気感は"冬の話”の空気感とは全く違うものだと思います。
Atmosphere
From his film "Winter Days", I understand that he is interested in Japanese culture.
I think the film represents one of the aspects of Japanese cultures, WABISABI : enjoyment in a quiet, beautiful humble life.
The film gave me feelings of an easygoing atmosphere, the poetic world, a little aloofness from the world, and some humour.
After watching the film, I thought WABISABI has nowadays come to mean expensive things or merchandise which are a long way from the original essence of WABISABI.
"The Overcoat" has many details, their world is poor, though the main character finds enjoyment in a simple life and the season is winter.
So the film and "Winter Days" have similarities, although the atmosphere is quite different from "Winter Days".
I think this is because "The Overcoat" is set in realistic hard life, whereas "Winter Days" looks set in a fantasy world or a poetic world.
"The Overcoat" hasn't been finished yet, however, I can tell that the differences in atmosphere would never change, because the end of the original Gorky story is cruelty not just poverty.
The main character, Akaky Akakierich Bashrmachkin becomes a ghost then he takes wealthy people's overcoat.
I would not like the story. After the film, I would be left with the feeling that nothing is certain in this world.
I think the atmosphere would be even more different from "Winter Days".
E: "外套" / "The Overcoat"
ゴーリキの作品として有名な"どん底"は、黒澤明監督が映画として日本版の"どん底"を制作してもいるし、戯曲としても出版されているようですが、高校の演劇教室で、私は"どん底”を観ました。
それっきりゴーリキとは縁がありませんでしたから、'外套'は読んでいません。
"どん底"よりも"外套"はもっと暗く救いようがない感じます。
"どん底"には、社会のどん底で生き延びる人々の強靭さとねばり強さと明るいパワーがあったような気がするのです。
私はノルシュタイン本人は、このような強さを持っていると思います。
それは彼が20年以上もゴーリキの”外套”に携わり続けていることからわかります。
不屈の精神と情熱の維持に驚かされます。
Rはロシアが崩壊し政府がアーティストに援助するのをやめたので、制作がコンスタントに続かなくなったから時間がかかるのだと言います。
それが理由のひとつであるかもしれませんが、中止されるのでなく継続している意思の強さがあることにはかわりありません。
また、彼が氷の貼った池か湖で泳いでいる写真も展示されていて、
そこからも彼の冬にむかう精神の強さ、逆境に立ち向かう彼の姿勢を感じました。
美術館の"外套"の部屋では、たくさんのドローイングが展示されていました。壁は黒い布地で覆われ、ドローイングも悲しくつらい世界を描いているので、心身ともに冷える場所でした。
"外套"の動画 : ★
それは"外套"の世界を少しでも見学者が共有できるようにした演出だったのかもしれません。
そこではスクリーンは小さく椅子もないですが、外套のアニメーションを観ることができます。確か、休憩場でも観る事ができました。
アニメーションの中で主人公のアカーキーの緻密な表情の動き、動作の観察力の深さにまたまた驚かされます。
表情や場面の作り方があまりに丁寧なので見落とすまいと集中しましたし、内容を理解しようと思うとまたまた集中を要求されるように
思いました。
かなり疲れました。
もしも最終版を見る機会に恵まれるなら原作を読んでおかなくてはと思います。
下記"外套"についてウィキペディアより
"その物語と作家はロシア文学に多大な影響を与えた。
ドストエフスキーの有名な言葉で
『私達はみんなゴーリキの'外套'からやってきた』
がある。"
そうなんですか〜、文化の違いを感じます。
私がこういっても許されるでしょうか?
『私達はみんな芭蕉の'おくのほそ道 / 奥の細道'からやってきた』
(芭蕉を勉強せねば……)
なにはともあれ、ノルシュテインさん、"外套"終了をお待ちしております。
そしてできれば、休憩がとれるDVDで観てみたいと思います。
"The Overcoat"
Gorky's "The Lower Depths" is a well known drama.
Akira Kurosawa has produced it in a Japanese situation, although
I haven't seen it.
When I was a high school student, I saw the play.
It was organized by the school.
I haven't seen any other of his works, so I haven't read
'The Overcoat'.
I think "The Overcoat" is more dark than "The Lower Depths", because I felt "The Lower Depths" has people who survive, in the Lower Depths, who are tough, strong willed and cheerful.
Norshtein has this kind of personality, I think this is because he has could work on "The Overcoat" for more than 20 years.
He must be tenacious, enthusiastic about his work, and concentrate very well.
My boyfriend R suggested that with the breakup of the Soviet Union, the government stopped economic aid to artists, so he cannot help it and he must work on the film longer and longer.
I think his idea might be right, although Norshtein has kept his motivation for the film.
In the museum, some photographs of Norshtein were shown.
In one of them, he swims in an ice pond or an ice lake without clothes, of course he does not wear his overcoart .
He does usually in winter. I understood his approach to winter and the I felt it shows his attitude to adversity, he is such a strong person, isn't he?
"The Overcoat" Room in the museum, was dark and hung with black curtains and most drawings were miserable, sad and cold.
"The Overcoat" : ★ (Short Film)
So I felt very cold there and I would have liked an overcoat myself.
Maybe the display was designed to give the effect of a cold night and so we share Akaky's feelings, even though not everyone understood.
In the film, Akaky's face, attitude and everything else is shown in a lot of fine detail.
Again I was surprised and impressed by Norshtein's deep insight.
I was tired, because I tried to understand the details, the meaning and the story.
If I can ever watch the finished film, before seeing it I should read the original book.
It might help my concentration.
According to Wikipedia about 'Overcoat',
『The story and its author have had great influence on Russian literature, thus spawning Flyodor Dostoyevesky's famous quote:
"We all come from Gogo's 'Overcoat'."』
I see. I think Soviet culture is very different from Japanese culture.
I could say like that, couldn't I? : We all come from Basho's 'Oku no Hosomichi'
(I must start studying about it)
Anyway I am waiting for the film to be finished, Mr Norshtein.
I hope when I watch the film, I would use the DVD, because I can have some rest times.